探針

ものの見え方をふやしたい

褪せる私信

千駄ヶ谷駅のカフェはチェーン店なのに内装がほかよりいいのでわざわざ電車に乗ってまできてしまう。金曜日の夕方はたいていそこにいる。

習慣が根づいてくると、意識は自然、遠い時間へ向かう。 もはや希望はない。冷凍庫に大事にしまっていた時計を取り出す。

方言の一部に古語が残るように、辺境は過去をそのまま保存していることがある。同じように、ぼくの中のきみは今のきみと違って昔のままなのかもしれない。だとすればぼくはどうするべきだろう? やっぱり、今のきみのためにすべて忘れてしまうのがいいのかもしれない。 でも、きみを「あの」名前で呼んだとき、震えた声で「やめて」と言ったことを覚えている。ぼくはなにもかもわかってしまったような気がした。 きみが思い出のひとつを見るような眼でぼくを見るとき、とてもいたたまれない気持ちになる。

母親に会う覚悟はした。いや、するほかない。しかし、その機会はうしなわれてしまった。ぼくはきみを 深く傷つけてしまったと思います。精確に言えば、ぼくの弱さで傷ついたと思います。

ぼくはもう、会いに行けるほど自分は正当だと感じられません。

会いにきてほしいのです。

こんな文章は公にするものではないので、そのうち消します。